(画像出典:EXPERT PHOTOGRAPHY/How to Do Infrared Photography With Basic Camera Gear)
前回は赤外線撮影用の機材についてお話ししました。
今回は、実際の撮影と、撮影した写真の画像処理について解説したいと思います。
赤外線写真の特徴
スノー効果
フィルムカメラでもデジカメでも、赤外線写真に特徴的なのは、植物の葉が白く写ることです。
これは、植物の葉が赤外線を強く反射するために起こります。
緑の多い公園や山林、牧草地などを撮影すると、真夏でも雪が一面に降り積もったかのように写ります。
(画像出典:EXPERT PHOTOGRAPHY/How to Do Infrared Photography With Basic Camera Gear)
これをスノー効果(雪景効果)と言います。
なお、針葉樹は、広葉樹や草地よりもやや暗く写ります。
青空が暗く写る
これに対し、青空は暗く写ります。
空が青いのは、大気中に浮遊している微粒子によって光が散乱し、特に青い光(波長の短い光)が強く散乱するためですが、赤外線フィルターは、この青い光を透過しないため、暗く見えます。
雲は長い波長の光も散乱するので、そのまま白く写り、空と雲のコントラストが強調された写真になります。
遠景がくっきり写る
赤外線は、大気中での散乱が少ないので、遠くまで届きます。
そのため、遠景がくっきりと描写されます。
水面が暗く写る
赤外線は水に吸収されるので、暗く写ります。
デジタル赤外線写真の特徴:偽色(False color)
赤外フィルムで撮影した赤外線写真は、完全な白黒写真なのですが、デジカメで撮影した赤外線写真は、撮影後に画像処理をすることで、偽色(False color)と呼ばれる独特な色合いになります。
日常の世界とかけ離れた、とても幻想的な写真になります。
(画像出典:NEW YORK FILM ACADEMY Student Resources/Learn How To Take Infrared Photography)
偽色の発色の仕方は、取り付けるIRフィルターの種類と画像処理の方法によって異なってきます。
波長の短いフィルター(590nm、650nm、665nmなど)を使うと、赤い可視光を透過しているので、色の数が多くなり、カラフルになります。
波長の長いフィルター(720nm、760nm、800nmなど)を使うと、色の数が減って、白黒写真に近くなります。
特に800nm以上のフィルターは可視光を全く通さないので、白黒写真になります。
(具体的な写真は下の方に掲載します。)
デジカメを赤外線仕様に改造する時は、換装するフィルターを発色の好みで選ぶとよいでしょう。
なお、フルスペクトラム仕様に改造する場合は、IRフィルターをレンズの前に装着するので、1台のカメラでいろいろな波長の赤外線撮影が楽しめます。
赤外線撮影以外にも、紫外線撮影や、KOLARI VISIONで販売しているような一般撮影用カラーバランスフィルターを装着すれば、通常のカラー撮影も可能になります。
(画像出典:KOLARI VISION/Kolari Vision UV/IR Cut Color Correcting Hot Mirror Filter)
ホワイトバランスと撮影後の画像処理
偽色を作るためには、撮影した画像の処理が必要になります。
RAWで撮影して、Adobe Lightroomなどの現像ソフトで処理すると、自分の好みに仕上げることができると思いますが、いろいろと面倒くさいので(^^;、私はJPEGで撮影して、画像レタッチソフトでカラースワップという手法を用いて処理しています。
JPEGで撮影する場合、ホワイトバランスはオートにせず、カスタムホワイトバランスを使用します。
私は720nm、760nm、850nmのフィルターを使う時は、木や草の葉っぱでホワイトバランスを取っています。
これは「スノー効果」で葉っぱが白く写るからです。
650nmのフィルターは、可視光(赤)を少し通すので、「スノー効果」が弱くなり、葉っぱが真っ白にはならないため、ホワイトバランスは通常どおり白い紙などを利用しています。
カラースワップの方法は、ネットで検索するとたくさんヒットしますが、おすすめのページは以下の二つです(いずれも英語サイト)。
ここでは赤外線撮影のチュートリアルだけではなく、赤外線カメラの改造も扱っています。
私は画像レタッチソフトは、Adobe Photoshopを使っています。
実は、カラースワップをチュートリアルに従って処理するのも、これまた面倒くさいため(^^;、私はKOLARI VISIONで無償提供されている「False Color Action Suite for Photoshop」を使って一発変換しています。
「False Color Action Suite for Photoshop」の導入、操作の仕方は、下の記事を参照してください。
作例紹介
以下に紹介する写真は、今回の記事のために新たに撮り下ろしたものです。
フルスペクトラム…オートホワイトバランス
フルスペクトラムカメラにフィルターを付けないでAWBで撮影すると、このような赤かぶりした画像になってしまいます。
これはイメージセンサーが赤外線を感知しているからです。
760nm…オートホワイトバランス
赤外線フィルターを付けた状態でAWBで撮影すると、このように真っ赤な画像になってしまいます。
650nm…カスタムホワイトバランス
画像処理前(いわゆる撮って出し)
Photoshopによる画像処理後
スノー効果がやや弱いので、木の葉っぱは黄色味がかっています。
空はかなり深い青色になっています。
720nm…カスタムホワイトバランス
画像処理前
Photoshopによる画像処理後
650nmに比べると、葉っぱはより白っぽくなり、空も暗くなっていますが、色情報はまだ残っています。
760nm…カスタムホワイトバランス
画像処理前
Photoshopによる画像処理後
720nmに比べて、さらに色情報が減っていますが、空の色にわずかに青が残っています。
850nm…カスタムホワイトバランス
画像処理前
Photoshopによる画像処理後
完全な白黒写真です。
私はしばらく760nm一本で撮影していたのですが、今回の写真を見てみると、650nmの色合いが結構いいことに気づきました。
今年は、650nmで撮影してみたいと思います(^^)
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